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日本酒スタイリスト 木村 克己
日本酒・目からウロコの話 8月号

「日本酒を涼しくする技術 その1」

エアコンも冷蔵庫も氷も無い、昔の人々は夏をどのように過していたのでしょう。

かつての多くの日本家屋は、高温多湿の夏対応型だったと思いますし、今でも古い街、京都や各地の小京都と呼ばれている処はそのままの姿が残っています。
木や竹と紙を組み合わせた風通しの良い造りです。
着る物は薄い絹か麻、木綿は高価だったようですが、本染めの藍はジーンズのインディゴと同じく虫や蚊が忌避する染料で、見た目も肌触りも涼しげで、こんな所にもご先祖様の知恵を見ることができます。

食生活は現在とはかなり違っていたでしょうが、飲み物のありようは今の私達にもヒントになることが多いと思います。
まず、たまらなく暑い時、あえて熱いお茶を飲む。これは発汗を促す逆療法で体の表面から素早く熱を奪取することをねらっています。
日本酒を燗につけ、横においた美味しい水を合いの手に頂く。なかなかに勇壮な涼の取り方でしょう。

まだ住居の至近に井戸があった頃には、色々な物を冷やしていたようで、昔の井戸を浚うと多くの酒器が出てきます。
特に備前や丹波立杭などの焼き〆陶器は、一昼夜程水につけておきますと、水を吸ってきます。井戸水はその周辺の、年間平均気温かそれより少し低い温度、12℃~14℃位です。
この冷えた徳利や猪口の水を切り、これまた水で冷やした酒を注ぎます。すると器にしみた水が蒸発する時に気化熱(熱を周囲から奪う)によって更に1~2℃下がります。
まさに天然の冷却器ですね。また、井戸水で割り水したことも充分に考えられます。

これにヒントを得て、陶器製の片口を水につけ、氷や冷蔵庫で冷やしておきます。この広口の器に酒を注ぎますと、酒の広い表面で酸素と触れて香りが立ち、柔らかな口当たりのお酒へと変わって行きますが、温度はほとんど上がりません。また、金属やガラスとは違って結露も少なく、滴で食卓や着衣を濡らす可能性も少なくなります。

是非、食器屋さんで片口を見つけたらチャレンジしてみて下さい。夏の日本酒ライフもより楽しくなると思います。

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