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日本酒スタイリスト 木村 克己
日本酒・目からウロコの話 4月号

「燗のサイエンス その6.お燗の技法5」

業務用酒燗器の問題点

これまで述べてきたように酒燗器は使い方によっては飲食店に利便をもたらしますが、その背後には極めて重要な責務と酒に対する店側の愛情が不可欠です。

それは酒燗器内の蛇管とポンプアップする部分のパイプ、注ぎ口、酒びんの差し込み部とアダプターキャップの厳重かつ丁寧な洗浄という以上の「サニテーション」の意識がなければ酒燗器を使う資格がない。ということです。

仮に店舗の終業の際に酒燗器のスイッチのみを切って帰宅したりすると、その管の中は明け方にかけて、50℃~30℃といった雑菌にとって非常に居心地よく活動と増殖できる環境となります。またこれが常態化すると管中にコロニーを形成するなど非衛生で故障の原因となる重大な問題が発生するだけでなく「この店の酒はマズイ」という客側の店に対する忌避の大要因となります。ですから「毎日」の洗浄を行うこと、最終の管の残酒は料理に用いることが重要です。

燗の方法 その6 囲炉裏燗

これはかつての日本家屋に見られた合理的な居住空間の中心である囲炉裏によるものです。囲(居)炉裏は暖をとる、調理する、煙の抜けていく所で燻製する、食事する、夜仕事のほの明るい照明となる、客人と酒を酌み交わすなど多機能の場ですが、もう一つは酒の燗をつけることがあげられます。

囲炉裏の燃料には薪と炭がありますが、いつの時代も炭のほうが高価なものです。
このどちらであっても、盛った灰に酒器をつき差して燗をするのです。
酒器には竹の先をくさび形にしたもの、なまこ徳利や鳩徳利などの紡錘状の陶器や酒壷そのものなどが考えられます。熱源から適当な間を取って、これらに酒を注ぎ入れて置きます。すると直火ではなく、炭や薪の赤く火照った部分からの遠赤外線によってじっくりと酒の中心から加温が行われてゆきます。相当に時間が掛かりますが、決して過加熱(ヒートオーバー)や沸騰は起こりません。目に映るやさしい炎と人の顔を見ながら話す内にいつの間にか、やわらかな燗がついています。ぜひともチャンスを作ってお試しいただきたいと思います。

燗の方法 プラス1 人肌燗(ひとはだかん)体温による燗

「ふところで ささあたためつ まつよいの
いとしだんなは いづこにおはし」

 懐で(手) 酒温めつ 待宵(酔)の
愛しい旦那は 何処に居わし

(江戸の狂歌風 木村克己作)

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