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日本酒スタイリスト 木村 克己
日本酒・目からウロコの話 5月号

新シリーズ第1回目・番外編「地中海と酒」その1

地中海の船旅エジプトにて

大阪の母港とする「ぱしふぃっくびいなす」という日本有数の豪華客船があります。総トン数29.000t、全長265m、乗客450名、乗員320人で、初航海は1999年。今年もこの船の2回目の世界一周、100日間クルーズが行なわれました。

私は大阪のホテル時代の元上司の引き合いで、このクルーズ中に船客に対する「お酒の講座」並びに「船のレストランバーでの酒の楽しみ」についてのレクチャーを行なうために乗船しました。すでに3月22日に神戸を出航した「ぱしふぃっくびいなす号」を飛行機で追いかけて行き、14日間同乗した後に再び空路で日本に戻るという旅でした。

4月14日午後に成田空港を出発、フランクフルトからオリンピックエアでギリシアのアテネへと乗り継ぎ、エジプトのアレキサンドリアに着いたのが真夜中。全22時間30分の行程です。

アレキサンドリアは紀元前4世紀にかのアレキサンダー大王が興した貿易港で風光明媚な「地中海の真珠」と呼ばれるリゾート地でもあります。
イスラム文化圏であり、主食は色とりどりの米と豆類などと、ピッツアの生地とインドのナンの中間のような小麦粉の平らな焼きパン、これに地中海のエビや魚、肉は少なく、羊か鳩がごちそうです。この国でのイスラムの戒律は少しゆるく、エジプトのビールやワインをたしなみます。スパイスの入ったアイスティーもよく飲まれていました。コーヒーは挽いた深焙りの豆粉を湯で煎じたトルコ式コーヒーでドロリとしていて、飲み終えたカップの底に多量のカスが残ります。味は苦く、酸っぱく、ざらざらしていて、大量の砂糖を加えて味のバランスをとります。

ところが、これにお香のような香りやフルーツとアニスの強烈な香りがする「水タバコ」を吸いながら飲むと、体が一担はぐっと重くなるのですが、次に不思議な軽い浮遊感が訪れ、体内に香ばしい香りが現れてきます。 お酒を飲まない人々にも、こんな楽しみや嗜好品同志の組み合わせ、相性の妙などがあるのだなと感じたものです。

明くる4月16日(水)はピラミッドへのバスツアー、そして「ぱしふぃっくびぃなす」の乗客との初顔合わせです。

ピラミッドまではアレキサンドリアから約3時間、ナイル河に沿った延々と続く農地を行くルートです。超近代的な高層ビルもあるカイロ市内を抜けた町の向こうに突然あのピラミッドが現れます。

想像していたよりも、あっけらかんとして、快晴だったにもかかわらず、ぼんやりとそこにあるといった、リアリティーのなさが大ピラミッドの第一印象です。
一辺230m高さ150m、もっとも大きな山や、もっと高いビルも見てはいるのですが、近ずいてゆくと、ピラミッドのどこかの部分が視野からはずれてしまうので結局は全体像が現実として把握できないというもどかしさがあるのです。推定600万トンもの重量があるとは思えないフワッとした物体、これが私のピラミッド観です。

そうして、いよいよ港に入っている白い華麗な我が家「ぱしふぃっくびぃなす」に乗船です。船は静かに地中海を滑り出してゆきます。
日本から持ってきた日本酒は異国の空気の中でどんな味がするのでしょうか。

~続く~

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