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本格焼酎と泡盛
春秋謳歌 -南からの焼酎便り-
   
- 第18回 -
第18回 焼酎発展を支えた感性技術
 昭和50年頃の本格焼酎の出荷量は7万キロリットル程度、35年を経た現在、およそ8倍の55万キロリットルまで拡大し、5000億円市場になった。品質も格段に向上し、安酒の代名詞としての“しょうちゅう”の面影は消えてしまった。「昔の芋焼酎は臭かったのに、今の焼酎は臭みが消えた。臭いをとっているのでしょう」などと、ときにはあらぬ疑いをかけられたりすることもある。
 焼酎の品質向上への精力的な取り組みが始まったのは昭和40年代後半からのことである。芋焼酎の“ニオイ”の原因は、製造技術の稚拙は別にして、大きく二つあった。ひとつが原料さつまいもから来る芋傷み臭、そして焼酎が空気に触れて酸化されたときに発生する油臭と呼ばれるニオイである。
芋選別
芋選別

 焼酎メーカーと協力してこの解決に尽力したのが国税庁醸造試験所の先生たちだった。
 サツマイモを1ケ1ケ手にとって芋の両端や傷み部分を丹念に切り落としていく芋選別と呼ばれる工程が組み込まれた。今では焼酎用さつまいもの品種が選別され、その品質も格段に向上して、いわゆる芋臭い焼酎をみることは無くなった。油臭の発生理由は、後に醸造試験所長となる西谷尚道博士によって昭和53年ごろ解明された。芋傷み臭と油臭がなくなったことにより、芋焼酎が本来もっていた柔らかで上品な甘さが引き立つようになったのである。

 焼酎の市場拡大の裏には地道な技術開発があった。派手な技術ではない。素材の魅力を自然に引き出す感性技術である。本格焼酎と泡盛をこよなく愛し、多大な功績を残された西谷博士は今年1月旅立たれた。朴訥で暖かいお人柄はそのまま焼酎の味わいに通じるものがあった。合掌。
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