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本格焼酎と泡盛
春秋謳歌 -南からの焼酎便り-
   
- 第26回 -
第26回 新たな旅立ち
 このコラムが始まったのは平成19年4月のことである。鹿児島県と鹿児島県酒造組合連合会、そして鹿児島の焼酎メーカー全社の寄付で鹿児島大学に設立された焼酎学講座に第1回目の学生が入ってきた年である。あれから4年、社会を取り巻く状況は大きく変わった。時代のウネリはいやおう無くあらゆる産業を直撃している。本格焼酎も例外ではない。芋焼酎が快進撃を始めている最中に設立され、3回の卒業生を送り出した今、快進撃は止まっている。これから新たな時代の始まりである。ガットやWTOの酒税国際紛争を挙げるまでもなく、業界はいつも多難な時代と直面し、活路を見出してきた。卒業生が新たな時代を切り開く戦力となることができて初めて講座設立の意義があり、講座を設立した先見性が評価されることになる。大いに期待し、また期待に応えていきたい。

焼酎・発酵学教育研究センター看板上掲式
焼酎・発酵学教育研究センター看板上掲式
 寄付講座焼酎学講座の役割は今年の3月末で終わり、4月から農学部付属焼酎・発酵学教育研究センターとして再出発した。研究の対象も広がり、焼酎文化学部門も新設された。理系の農学部に文化学部門があるとは奇異な感じを持つかも知れない。しかし、あらためて酒の歴史を俯瞰してみるときわめて重要な意味が浮かび上がってくる。酒はその始まりはすべて地域農産物を原料としたきわめてローカルなもので、そこに独自の酒文化が生まれた。そこでは風土性が酒文化の根幹を成していた。しかしその後、グローバル化を目指す酒は風土性を失い、酒質の画一化、価格競争の激化を招いてしまった。それを推進したのが、いいものを安く大量に作り出すことが得意な“技術”であった。その方向は本格焼酎の目指す世界ではない。本格焼酎の命はその風土性にあるといってもいい。技術も文化性を持たなければならない。技術の文化性と焼酎文化が両輪となることが本格焼酎の明日を切り開くものと考えている。

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