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本格焼酎と泡盛
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第4回 昔の文献にみる本格焼酎&泡盛(4)
  白い夏帽子にレースの日傘、はたはたと動く扇子からただよう香の匂い…暑い都会の夏も、なかなかに風流です。陰の多い小道に入れば、今もひっそりと建つ洋館、玄関に植えられた蘇鉄(ソテツ)の艶緑に驚かされることがあります。昭和初期の南洋趣味を反映して、あちこちに植えられているのを見ることができます。

 都会人があこがれた熱帯楽園を象徴する蘇鉄、この植物には観賞用以外の側面もあります。奄美大島では、幹のデンプンが食用とされ、焼酎造りにも利用されていました。 

 江戸時代、黒糖地獄と呼ばれる重税を課せられた奄美の生活は貧しいものでした。多くの人々はサツマイモを常食としていましたが、それも不足しがちであったため、蘇鉄のデンプンをさまざまな食品に加工していました。

 薩摩藩士・名越(なごや)左源太が記録した奄美大島の民俗誌『南島雑話』には、「蘇鉄粉を団子にして味噌にても、醤油にても煮て食し、或(あるい)は…焼酎にも煮るなり」とあります。ただ、蘇鉄は粉にするまでが大変でした。青酸が含まれているため、乾燥、浸漬をして毒抜きをし「甚(はなは)だ手間の要る事なり」とも書かれています。

 蘇鉄を眺めて南国風情を味わった都会人、それを食して飢えをしのいだ南国・奄美の人々…風土の違いは皮肉なものです。しかし『南島雑話』に描かれた酒宴の図は、実に陽気でほがらかです。苦心して蘇鉄焼酎を造り出した奄美の人々は、いつの時代も酒を求める人間の、究極の成功例なのかもしれませんね。
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